狐に包まれる

その日は、子供を英検に送って行って、ドトールで車の中を掃除して、
いつもしているようにミラノサンドを半分個しながら時間を潰し、再び子供を迎えに行く予定だった。
100円で掃除機を掛け終って時計をみると、お迎えまでかなり時間があることになり、
ここで待っているのも疲れるからとひとまず家に帰ることになった。


その車中にて妻、
コーヒーとか奢ってくれるとか言うからさあ一緒に付いて来たのに、
掃除機だけ掛けさせられて割に合わないなあ。
まるで、狐に包まれたみたい。
来たあ。
奥さんっ。言ってしまいましたね。
化かされるとか、騙されるとかいう意味だったら、狐に抓まれる、だよ。
つままれる。つままれる。つままれる。
当家では、間違えると必ず3回責められることになっている。
微妙に固まる妻。
当家では、それで終わりにはならないのが常である。
まああ、確かにい、狐のマフラー首に巻いただけでも暖かいだろうからあ、
狐本体に包まれたらあ、生身の肉体だからあ、狐の体温でえ、相当暖かいねえ。
ぬくぬくやあ。
野生のネックウォーマーやあ。
髭が鼻に当たってえ、あの高音域のくしゃみ出まくり。
だいたい、狐さん巻いたままだったら、何処へも行けないんじゃない。
高島屋なんか入店拒否だし、食べ物やさんなんか絶対無理。
近所のT海さんでもだめだろうなあ。
狐さんに気使ってきつねうどんとかおいなりさんとかとても注文できない。
どこ行くん?寒空の中御所とかぐるぐる回っとけーて感じ。
マフラーにするとしても狐が自分で尻尾をくわえてくれるかなあ。
コンコン鳴いたら、この時期だしマスクしろって言われるかもね。
狐さんに合うマスクなんて売ってるのかなあ。
やっぱお支払いは、葉っぱのお金でって、それ狐の手袋の話やん。
などなど、
家に着くまで延々と責めたてられ、フルボッコにされましたとさ。