お墓参りと、茶番劇と。


奥様のお母様のお墓参りに行った時の段。平等院を越え、宇治川ダムに向かう山間部を少しいったところにお墓がある。お兄姉がおられるので、お彼岸やお盆とかはきれいにされているだろうと思い、その時期をはずしてお参りすることがここ数年の慣例になっている。天気が良さそうな週末を待って車を走らせたのだけれど、途中でお花を購入するのをうっかりしたまま到着してしまった。来月にも来る予定だから、お掃除だけでもしておこうと草むしりなどをしていると、三つほど隣のお墓に御夫婦がお参りに来られた。りっぱなお花を用意されていたのを見て、こちらは御線香だけという体なので少し恥ずかしいなあとか、あるいはお花も持って来ないなんて近頃の若い者はとか決して若くはないけれど思われるのではないかとか思い、奥様を桶とか柄杓とかの道具が置いてある所にこっそり呼んで、隣の御夫婦に聞こえるように、「やっぱり、お花持ってきた方が良かったんじゃない。」と俺に聞いてくれないかと言った。「ええ、そんなんよう言わん。」と言いつつもしぶしぶ納得してくれた。御線香に火をつけながら、奥様に先ほどのことを促すと、大きく深呼吸をしてから、向こうの御夫婦に顔が見えないようにしながら聞こえるように、「やっぱり、お花持ってきたら良かったんと違う。」と半分吹き出しながら言った。それに答えて、「いいんだよ。お兄さんやお姉さんに気が悪いだろう。御線香だけでいいんだよ。」と返した。これで、お花が無い事情を想像されて何だか知らないが他のいろいろなことも納得されることだろう。二人とももう少しで笑ってしまうところだった。天国のお母さんはあきれ顔だったかもしれないな。天国の町内会で肩身の狭い思いをしていなければいいのだけれど。この茶番劇に。