細雪

を読んでみようと思い立った。のは、村上春樹氏のある短編集の影響。

"The Makioka Sisters"という題名で英訳本があるらしい。

日本語の伝統に鑑みて最も正当な書記法である?歴史的仮名遣いや

旧漢字がでてきて最初はストレスを感じながらの読み始めだったけれど、

ネットで調べ調べしながらも案外とすいすい読み進めることができた。


 あの、神門を這入って大極殿を正面に見、西の廻廊から神苑に第一歩を踏み入れた所にある数
株の紅枝垂、ーーー海外にまでその美を謳われていると云う名木の桜が、今年はどんな風であろ
うか、もうおそくはないであろうかと気を揉みなが、毎年廻廊の門をくぐるまではあやしく胸
をときめかすのであるが、今年も同じような思いで門をくぐった彼女達は、忽ち夕空にひろがっ
ている紅の雲を仰ぎ見ると、皆が一様に、
「あー」
と、感歎の声を放った。


櫻の季節であったならば直ぐにでもその風情を味わいたいといてもたってもいられないだろうし、

夏の暑い盛りの今であってさえ来年の櫻に思いを馳せてしまう。





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 谷崎潤一郎 全集
 第二十四巻 上
 第二十五巻 中
 第二十六巻 下

 昭和三十四年發行
 定価壱八〇圓
 なんと裝釘者 棟方志功